6.ツンツンリーマンの恋人。

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  「……マジかよ。お前はバカか」 「!バカって」 「無駄にヘラヘラして隙見せてるから触られるんだろ。ったく」 「べ、別に隙を見せてたわけじゃ……触られたと思ったのももしかしたら私の勘違いかもしれないですし!それに仕事だし、大切な取引先の人だし、笑顔でいなきゃいけないって。私なんかの感情だけで変に拒否するのも良くないかなと思ったし……。だから、私は気にしてませんから」 「アホか」 「な……っ!」 「はぁ。全然気にしてないって顔してねぇだろうが。こっち来い」 「ひゃっ!?」 握り締めていた私の拳を部長の大きな手がすっぽりと包み込み、身体を寄せられる。 “あの時”と同じように手を触れられているというのに、“あの時”とは違って部長の手のぬくもりはほっとする。 安心感に包まれたからか、もう忘れたと思い込んでいた嫌な気持ちが蘇ってきて涙が出てきてしまう。 こんなちっぽけなことで泣くなんて、子供みたいだ。 「ほんと、手間のかかる女だな。失礼にならない拒否の仕方くらい少し考えればわかるだろうが。……つーか、拒否しろよ」 「部長……っ」 泣いてることを知られたくなかったことと、無性に甘えたくなってしまって、私は部長の胸におでこをトンと寄せる。 それとともに、封印していた気持ちがぽろぽろと零れていく。 「ほんとは……すごく嫌、でした」 「……ふぅん」 「部長以外の男の人に触られるなんて、嫌だから」 私が触れてほしいのは、部長だけ。 「……お前、言ってることとやってることが違くねぇか?」 「へ?」 「喜多村は……あーもう、いい。はぁ」 「……喜多村さん、ですか?」 「いい。何でもない」 「……?」 何で喜多村さんの名前が出てきたんだろうと思ったけど、私の手を包んでくれている部長の手に力がこもった気がして、その疑問はどこかに行ってしまう。  
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