3.ツンツンリーマンの信頼。

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  涙目のままひとしきり笑った後、ふと顔を上げると部長の口が開いたのが見えた。 いよいよ怒られるかな、と思った時。 「……ひとりでずっと待ってたのか?」 「へ?あ、はい。何人か営業の人は戻ってきましたけど」 「……喜多村、とかか?」 「あっ、はい」 「……ふーん。でも、この時間まで待ってたのは俺を待ってたから、なんだな」 「はい……。ご迷惑、でしたよね。すみません」 こんな風に確かめるということは、相当迷惑だったということだろう。 ただいつもと違って、嫌そうな表情はそこにはなく、私の心の中を読むような瞳で私を見ている。 そして私もその綺麗な瞳を見つめる。 その瞳にドキドキと鼓動が速くなっていくのは仕方のないことだと思う。 胸がきゅうっと締め付けられるみたいで、痛い。 「……はぁ。ったく、何なんだよ。気持ちわりぃな」 「すっ、すみません!」 「は?だから、何でお前が謝るんだよ。意味わかんねぇ」 「へっ!?だ、だって……」 「あぁ?何だよ」 「……?」 部長のことを見つめる私に向かって「気持ちわりぃ」と言われたと思ったのに、部長は何故か眉間に皺を寄せて首を傾げている。 ぶ、部長が考えてることが全くわからないんですけど……! って、いつもわかってるわけじゃないけど、今は部長の言ってることと考えてることが矛盾してるみたいで、部長らしくない……。  
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