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時刻は16時27分。教育相談室に入って30分が経とうとしていた。ディープキスをされて足腰に力が入らない状態の俺は一宮先生にされるがままになっていた。俺のカッターシャツのボタンは外されているため上半身が露になっている。先生は俺の首筋に軽く口づけをした。
「ふーん…藍堕くん綺麗な肌してんのね」
「っ……」
どう反応していいのか分からない。ありがとうだなんてふざけてもこんな状況では言えない。俺は目を固く閉じ無言でいると、先生は俺の首筋に触れさせていた唇をゆっくりと下へと滑らせていった。
やがて先生は俺のズボンのベルトへと手をかける。俺の脳はそれに素早く反応した。
「ちょ!先生、そこは…」
俺は先生の手を反射的に掴んだ。すると先生は唇の動きを止め、俺の目を見ながら低い声で言葉を発した。
「何逆らってんの?道具は道具らしくじっとしてろ」
「ど…っ!?」
先生の「道具」という言葉が俺の脳内でリピートされる。…あぁ、そうか。今分かった。先生が俺に向けるその無表情(かお)、そして俺を見下すようなあの鋭い眼。これらは先生にとって“道具”を見る目と同じだったのか…つまり___
「…俺は、先生の道具…?」
声に出すつもりはなかった言葉。それが、いつの間にか声として出ていた。俺の言葉に先生は鼻で笑いながら答えた。
「ふっ…やっと気付いたか。じゃあここは国語の教師らしく…問題、何で先生が藍堕くんの写真を撮っていたでしょーか。15字以上20字以内で答えなさい」
「…俺を、道具として狙っていたから…」
どうしてだろう…どうして、問題の答えがわかってしまったのだろうか。混乱したままの脳内で、何故かこの問題の答えだけがまとまった。バラバラになったパズルのピースが、何の迷いもなく全て、隙間なくはまったのだ。俺の答えを聞いた先生はまた俺とキスをする。今度はディープなんかじゃなく、軽く、触れるだけの優しいキス。唇を離すと吐息がかかるくらいの距離で先生は俺に微笑みながら言った。
「せーかい。良くできました」
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