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「皆!おっはよー!」
凛は元気よく教室に入りながら声をあげた。この一声に教室にいる皆も続いて挨拶をする。凛は茶髪で服装も乱れているが、明るくお人好しな性格のため周りから怖がられるどころか皆からの人気者なのだ。
「おはよ、凛!また同クラだね!よろしく」
「おぅ、よろしく!」
凛の後に続いて教室に入り、声をかけてきたこの女子は臼井穂香(ウスイホノカ)。凛は気付いていないが、穂香は凛の事が好きなのだ。穂香は可愛いく、テストも平均点以上だから男子に人気がある。そんな穂香がチャラい凛を好きだなんて…ちょっと勿体無い気がする。
「……ちょっと、何見てんのよ」
俺の視線に気付いたのか穂香は俺を睨みながら問い質してきた。
「いや、別に何も?……こいつのどこがいいの?」
俺はそう言って凛の方をチラッと見る。すると、穂香は顔を赤らめて右手に拳を固めてから俺に腹パンを入れた。
「ぐぉうふ…っ!」
「あ…あ、あんたにはデリカシーの欠片もないの!?」
最後に「バーカ」という言葉を俺に浴びせてから穂香は自分の席へと向かった。俺と穂香の会話を全て聞いていた凛は苦笑しながら俺に言う。
「細かい事はよくわかんねぇけど…あんまりからかうなよ?」
「げほ…わかってるよ…」
俺は鈍く痛む腹を抑えながら自分の席を確認して座った。
「クッソ…あの暴力女」
俺の独り言は周りの生徒の笑い声によって掻き消された。
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