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『お前らは奴隷だ!働け!働け!!働け!働け!飯?そんなもの働いてからに決まってるだろうが!!それ以上働けないのなら死ね!このクズどもが!』
「っ!?」
目の覚めるような悪夢と共に最悪な目覚め。
家の隙間からこぼれる陽の光が朝だと言うことを告げている。
目覚めたのはまだ成人に満たない少年。ボサボサの金髪に翡翠色の瞳。身に纏う衣服はみすぼらしく、所々穴まで空いている。
「おいおい、マジかよ。最悪な目覚めだな」
ぼやくようにして呟く少年の脳裏にはまだあの悪夢の光景がしっかりとこびりついている。
荒れ狂う鞭に赤く爛れた皮膚。そこから涌き出る血が床を濡らして……
「ぐあーーーーーーー!!!」
思わず思い返しそうになった悪夢を絶叫と共に振り払う。
「くっそ!胸くそ悪いな!」
悪態をつきながらも家を傷つけることはしない。とはいっても、家がボロすぎて、傷つけて壊れでもしたらと言う心配があるだけではあるが。
「まったくよー、はぁー」
少年はため息をつきながら家を出る。
目的地は井戸。ここカレン区では水は貴重なものであり、水自体はここから遠く離れた川からこのカレン区に引いているのだがその川がまた枯れたりするのである。
その為水はこのカレン区ではものすごく貴重なものであった。
「今日は水あるか?」
そうここ何日か干ばつが続き、蓄えの水も底をつき始めているため今日で水を手に入れられなければそろそろヤバイ。
「まったくよー、国のお偉いさん方はこんな小さい村のことはどうでもいいってか」
この劣悪な環境を改善しようとも、ましてや干渉すらしてこない国に文句を垂れながら歩いていると何やら前方が騒がしい。
「あっ!おいおい、レース!大変だぞ大変!」
こちらへ大声で叫びながらやって来るのは彼、レースの幼馴染み兼親友ことセンリだ。
「なんかあったのかセンリ?」
「それがさそれがさ国のやつらがここの井戸をさっきから制圧してるみたいなんだよ!」
「はぁー?なんでそんなことしてんだよ?」
ここカレン区を含めた10数個もの候区を納める国、ヘストールは通称水の都と呼ばれるほど水資源が豊富なのである。
その為国のやつらが井戸に集まってそれも制圧するためだなんて信じられない。
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