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「いや!わかんねーんだけど、てか水とか普通にこっちがほしいくらいなのに!だからなんで制圧してんのかわかんねーんだって!」
「落ち着けよ。さっきからいってることめちゃくちゃだぞ?」
「なんでお前は落ち着いてんだよ!」
「いやいや落ち着いてはねぇーぞ?むしろ怒りしかないな」
顔には出さないもののレースのはらわたは煮えくり返っていた。
水資源が豊富なのにも関わらず、国の王やその側近、貴族の連中がそれを独占し、小さな村はその恩恵にあずかることさえない。ましてやこちらが困っているときは干渉すらしてこないのである。
それにも関わらずこの村唯一の井戸を占領?ふざけるのも大概にしてほしい。
「なぁレース---」
センリは途中で次の言葉を出すことができなかった。
長年付き添った友人だからこそわかる。
今レースはこれまでにないほどキレている。
レースは徐々に騒ぎへと歩みを進めていく。周りから聞こえてくる声から大体の概要はつかんだ。
どうやらここに眠る鉱山資源の採掘を進めたい国のお偉いさん方は川から水を引くこの井戸が邪魔らしく、壊したいという欲求を押し付けているとのことだ。
「お願いしますよ。この井戸がなければ私達は生活できないんでさ」
「そんなの知るか!お前たちはこの国の統治下にあるんだぞ!さっさと従え!」
「たっく、奴隷区のやつらはこんぐらいでしか役に立てないだろうが!」
「で、ですが、」
「うるせーよ!」
騒ぎの全貌が見えてきた。
騒ぎの中心にいるのはおおよそで数10人。国のお偉いさん方の方は厳つい護衛を引き連れて完全にこちらを威圧している。
対してそれに交渉しているのがカレン区の長であり、レースの育ての親であるスロウじいさんだ。
「おい!さっそくとりかかれ!」
「「「「はっ!」」」」
「ちょっ!ちょっと待ってください!」
「うるさいやつは黙らせろ」
「「はっ!」」
命令と共にスロウじいさんに向かって降り下ろされる理不尽な拳。老人相手に容赦のない行動であったがその拳がスロウじいさんに当たることはなかった。
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