第二章:蘇りは命日

7/10
前へ
/37ページ
次へ
「どうして、日本に来たんですか?」 この人がまだ「なりきりレスリー」として答えてくれるかは疑問だが、もう少し話したいので質問を続ける。 相手は笑いをどこか苦くしてコーヒーの紙コップに唇を付けた。 その様子を見ると、微かに不安で胸がどきついてくる。 この人、もう話を止めて切り上げたいのかも。 見ず知らずの日本人の女に粘着されて、うっかり冗談でレスリーだと言い出したのを後悔しているかもしれない。 「だって、ホンコンにいたら、ばれちゃうでしょ?」 肩を竦めて、再びいたずらっぽい笑いを浮かべた彼の姿にほっとする。 どうやら、もうしばらくはレスリーでいてくれるみたい。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加