第二章:蘇りは命日

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「日本にもファンはたくさんいますからね」 私みたいに、どこかで生きていて欲しいと願っている人間もだ。 十二年前の今日、レスリーは香港のマンダリンホテルの屋上から飛び降りて死んだ。 それが彼の最後に残した真実なのだとは、未だに完全には受け入れられない。 「だから、来た」 目の前の相手はまるで他人事(ひとごと)のように言い放つと、何だか自嘲的な風に唇を笑った形のまま閉じて、紙コップの中に目を落とした。 そろそろコーヒーも冷めてきたのかもしれない。 いい加減、もう私も切り上げるべきかな? そう思った瞬間、ポツリと彼の唇から呟きがこぼれた。
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