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「十二時までにはこっちに着くの?」
スマートフォンで話しながら、私は見るとはなしに、ガラス張りの回転ドアの方を見やる。
磨き抜かれたガラス板には、鏡さながらロビーの風景がまばゆく映し出されていた。
その虚像越しに、水面下を泳ぐ魚の鱗さながら目を刺す街の灯りが無数に認められる。
だが、いくら明るくても、もうすぐ夜の十二時というのが問題だ。
「もう、夕食は取ったんだよね?」
夕食付のプランでホテルを予約しなくて良かったと改めて思う。
「私はもう自分だけで食べたよ」
本当は夕方に喫茶店で紅茶とケーキを食べたのが最後だけど、正直、さほど食欲はない。
というより、近頃は規則正しく食欲が起こらない。
ニュッと胃の下が持ち上がる感触を覚えて、私は自分のお腹に目を落とした。
それに、毎日時間通り食べなくても、子供を宿したお腹は日を追うごとに膨らんでいく。
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