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~とある美術教師の回想~
幕間の三【とある美術教師の回想】〜或いは未完成恋愛狂詩曲〜
高校時代の美術教師が、僕の絵を見てこういった。
「技術は百点。芸術性はゼロ点ね」
今思えば、それがあの人を好きになった瞬間かも知れない。それは何気無いただの風景画。授業で描けと言われたから描いただけの、つまらない色褪せた学校の景色。
写実、と言えば聞こえはいいが、それならば写真でいい。まあその程度のものだと、僕も実際そう思う。
絵を描くのが嫌いだったら、授業で美術なんか選択しない。絵を描くばかりが授業内容でもないが、割合は高い。別に専門でもない教師に来てみれば、かなりコスパも良かろうと。彫刻やらせて怪我をされることもなく、粘土を与えたのち細かくちぎられ砲弾に変化。座席間戦争も起きることはない。
とまあ、そんな捻くれた僕の性格を見抜いてか、そんな風な感想を言ったのはあの人が初めてだった。
……何の因果かよくわからないけど、僕はそれなりに裕福な家庭に生まれたようだった。
父は日本画家。母は生け花の先生。年の離れた兄と姉はそれぞれ音楽の道に進み、兄はバイオリニスト、姉はソプラノ歌手。
端から見れば絵に描いたような芸術家一家だろうけれど、僕から見れば社会不適応者のコミュニティ。
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