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月山神社
「波留か? 一体どうしたんだ」
本殿の方からこちらに来たその壮年の男性は、この神社の神主だ。
「……伯父さん」
そして、波留の伯父・明長でもある。
「伯父? ってことは、ここは米子の……」
波留の呟きに、燦は改めて男と鳥居に掛けられた神社の名前を見た。
月山神社。
名前を見れば分かるように、月の神である月読尊を祭っている神社だ。
「米子って母さんのことかな? ……そうか、君が道隆が言っていた鬼の婚約者か」
明長の優しげな目に見定める様な鋭さが込められる。
「おかしな気配がしたので来てみたんだが、もしかして君が何かしたのかな?」
詰問するような口調に、波留は慌てて伯父と燦の間に入った。
「何かしたと言えばしたけれど、あたしを助けてくれたの。悪いことはしてないよ?」
燦のことはまだ腹立たしく思っていたが、助けてくれたいわば恩人だ。
悪く言われるのは嫌だった。
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