月山神社

2/15
152人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
「……波留は彼が悪者ではないって言うんだね?」 「うん。悪い人じゃないってことは保証出来る」  波留にも試す様な視線を送る明長に、彼女は真っ直ぐその目を見返す。  逸らしては駄目だ。  そんなことをすれば彼は波留の言葉を信じるに値しないものとしてあつかう。  普段は優しい伯父だが、こんな風に人を()るときには容赦がない。  姪にも甘くない辺り、道隆とは違う。  数秒ののち、彼の目がフッといつもの優しい眼差しに戻った。 「そうか、分かったよ。なら取りあえず社務所の方へ来なさい。お茶でも飲みながら何があったか聞こう」  そう言って波留と燦を誘うと、明長は元来た道を戻る様に歩を進める。  数歩歩いて「ああ、そうだ」と軽く振り返ると明長は真っ直ぐ燦を見た。 「私からも君たちに話せることがあるかもしれない。母から色々聞いているからね」  と、意味深な言葉を落としてまた歩き出す。
/172ページ

最初のコメントを投稿しよう!