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参道を通り、手水舎を通り過ぎ、拝殿が見えてくると左に曲がる。
二階建ての社務所の玄関から入り、左手にある四畳半ほどの部屋に案内された。
明長が麦茶を持って来てくれたので、走って喉が渇いていた波留は思わず一気飲みした。
「お代わりが必要だな」
苦笑しながらそう言った明長はもう一度麦茶を持って来てくれた。
「あ、話す前に電話借りていい? 今日習い事の日だったの。この状態じゃ行けなさそうだから、連絡しておきたくて」
「ああ、今日だったのか。良いよ、先に電話しておいで」
許可を得た波留は勝手知ったる――というほどでもないが、電話のある場所は知っているので一人で部屋を出た。
***
初対面である明長と二人きりになり、少し気まずい気分になる燦。
そんな燦の感情を読み取ってか、明長は優しく微笑みながら改めて挨拶をした。
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