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「さっきはすまなかったね、疑うようなことを言って」
「……いえ」
神の領域を荒らす者を警戒するのは当然の事だ。
濡れ衣を着せられそうになったことはまだ不満には思っているものの、燦は理解もしていたため謝罪を受け入れることにした。
「改めて、この月山神社の神主をしている陸奥 明長です。波留の伯父でもあるが、君には玲也の父と言った方が分かり易いかな?」
「あ、玲也の……。そうなんですね」
玲也とは燦の同級生だった。
それほど親しいわけではないが、クラスは同じなのである程度の人となりは知っている人物である。
燦は驚きはしたが、それほど珍しい事でもないかと納得する。
「縁とは不思議なものだね、どこでどう繋がっているのか分からない」
そう言って自分のお茶を飲んだ明長は、ふぅと息を吐いて燦を見る。
「君が波留の婚約者になって、良かったのか悪かったのか……私にはまだその判断が出来ない」
「……」
明長がどこまで知っているのか。
米子からどこまで聞いているのか。
それが分からないうちは迂闊なことは言わない方が良いと思い、燦は彼の話を無言で聞いた。
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