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「母はずっと、子や孫を鬼の嫁にしない様動いていた。いくら約束とは言え鬼に嫁にやりたいなんて普通は思わないだろうから、そんな母の行動は当然のものだと私もずっと思っていたよ」
鬼、と一言で言うと悪いモノの様にしか思えないのだろう。
そう言う意味では、明長の考えも当然のものかも知れない。
だが、燦を含む鬼の一族は長く人と交わり、すでに姿もその心も人とあまり変わりはない。
あるのは鬼としての力の片鱗のみ。
幽世に住まう本物の鬼とは、違うモノと成っていた。
(米子はその違いも分かっていたはずだが……。どんだけ嫌われてたんだよ、うちの爺様は)
未だに米子のことを良い女だったと口にする燿光を思い出し、燦は小さく呆れの溜息をつく。
「だが、母が六十を過ぎた頃だったか……。全てを私だけに話してくれたよ」
全て。
鬼との約束の話。
そして、米子の一族が背負った宿命を。
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