157人が本棚に入れています
本棚に追加
/172ページ
全てと言うならば、それらも聞いたという事だろう。
「鬼に嫁にやると言うのは、最終手段だったんだね。……燦君、一つだけ聞きたい。既に婚約という縁を結んでしまったのだから今言っても遅いのだが……」
明長はそこで一度言葉を切り、続きを少し躊躇う。
だがすぐに表情を真剣なものに戻し、続きを口にした。
「その最終手段は、本当にしなければいけない事だったのかい?」
それをしなくても、間に合ったのではないか。
そう問うている。
その質問に、燦は初めて目の前の神主が視ることの出来ない人間なのだと気付いた。
先程の異変を感じることが出来たのだから、無能というわけではないだろう。
だが、視ることまでは出来ない。
視えていれば、波留の霊力が急激に戻っていることに気が付いたはずだから。
だから分からない。
燦との婚約が、波留にとって本当に必要なことだったのかが。
最初のコメントを投稿しよう!