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波留の周りには、これほどまでに霊力の少ない人間しかいないのか。
米子の縁者だと言うのに、その力はほとんど受け継がれてはいない。
……波留以外には。
明長の問いに、燦は躊躇うことなく答える。
「しなければいけない事でしたよ。あいつを……波留を守りたいのならば」
淡々と、ただ事実を口にする。
それを聞いた明長は、グッと目を閉じてから深く長く息を吐き出す。
そして「そうか」とだけ呟いた。
***
「はい、すみません。あ、来週は予定ちゃんと聞いてなくて。後でまた電話します。はい、ありがとうございます」
電話を終えると、波留はふぅと息を吐きながら受話器を置いた。
いつもならとっくに着いているはずの時間だったため、先生を少し心配させてしまった様だ。
電話口で名乗るなり「どうしたんだ!?」と聞かれて誤魔化すのが大変だった。
途中で体調が悪くなり、伯父のところで休ませてもらっていることにしたが、本気で信じてくれたのかは微妙だ。
何かを察したのか、それ以上は聞いてこなかったが。
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