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教室では、先ほどの屈辱を愉快そうに笑う圭人が手を叩き笑い転げていた。
「何がそんなに面白い」
先ほど、というのは言うまでもなく羽有華のあの一言だ。
体育の授業を終えた俺は、違う意味の汗で汚れた体育着を脱ぎ、そのまま圭人の顔面に投げつけた。
それでも笑いが止まらず肩を揺らす圭人は絞り出すように必死で訴える。
「だってよ!・・・っい、いづ・・・唯鶴があんなっ・・・扱いされるのなんて・・・ふっ・・・見たことないからさははっ」
野郎め・・・。
込み上がる怒気を抑えるものの、身体は震え、収まるに抑えきれなかった。
「しっかしまあ、あんな困り顔で、しかもあんな可愛い子に言われたら俺ならもうどうだってよくなるな」
圭人が横目で俺を見やり、口元をにやつかせる。
つまり、プライドがどうとか小さいことをいつまでも気にしてんな、とでも言いたいのだろう。
つくづくムカつく野郎だ。
きりをつける圭人は何食わぬ顔で着替え始める。
「分かってるって」
誰に言うでもなく呟いた声に肩をすぼめてみせる。
もちろん、圭人はそんな様子これっぽっちも見ておらず、呑気に口笛を吹いている。
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