2886人が本棚に入れています
本棚に追加
「…冬馬さんだって苦しかったと思うよ?
ナツのことだって、ちゃんとナツの想いを受け止めようとしてたから、何度もデートに行ったと思う。」
「…そうかな…?」
「ナツは、真剣に考えてない男の子と二人でとデートできる?」
「無理だよ!そんなの!」
「冬馬さんはやってたじゃん。」
「あ!」
「ね?ちゃんとナツを考えてくれてた。
嫌悪対象のことも聞いたけど、ナツのことを真剣に考えてたから言えなかったって思えない?
なのにナツは逃げるの?それでいいの?」
「……………」
「嫌いだからって消防士を遠ざけてた。それだけだったナツは、冬馬さんのことを嫌いになる?
消防士がどういうものか、ちゃんと知った上で嫌いになったほうがいいんじゃない?
…ナツは冬馬さんの一部を知っただけだよ。それって進歩だと思うけど。」
「…進歩…」
「好きな相手のことがどんどん分かってくる。
冬馬さんだって消防士って理由で嫌われるなんて、可哀想じゃん。
自分のことを知って自分を嫌いになるならまだしも、仕事なんだもんね?」
穏やかに諭すような気持ちで夏に言うと、夏は食い入るように私を見た。
その目の奥は、やはり冬馬さんの想いに溢れていた。…そして。
「…頑張ってない。…私、マックの君が好きだから頑張らなきゃ。…諦められない。消防士、調べてみる。」
そう言ったナツを思いっきり抱き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!