4

34/43
前へ
/356ページ
次へ
「…冬馬さんだって苦しかったと思うよ? ナツのことだって、ちゃんとナツの想いを受け止めようとしてたから、何度もデートに行ったと思う。」 「…そうかな…?」 「ナツは、真剣に考えてない男の子と二人でとデートできる?」 「無理だよ!そんなの!」 「冬馬さんはやってたじゃん。」 「あ!」 「ね?ちゃんとナツを考えてくれてた。 嫌悪対象のことも聞いたけど、ナツのことを真剣に考えてたから言えなかったって思えない? なのにナツは逃げるの?それでいいの?」 「……………」 「嫌いだからって消防士を遠ざけてた。それだけだったナツは、冬馬さんのことを嫌いになる? 消防士がどういうものか、ちゃんと知った上で嫌いになったほうがいいんじゃない? …ナツは冬馬さんの一部を知っただけだよ。それって進歩だと思うけど。」 「…進歩…」 「好きな相手のことがどんどん分かってくる。 冬馬さんだって消防士って理由で嫌われるなんて、可哀想じゃん。 自分のことを知って自分を嫌いになるならまだしも、仕事なんだもんね?」 穏やかに諭すような気持ちで夏に言うと、夏は食い入るように私を見た。 その目の奥は、やはり冬馬さんの想いに溢れていた。…そして。 「…頑張ってない。…私、マックの君が好きだから頑張らなきゃ。…諦められない。消防士、調べてみる。」 そう言ったナツを思いっきり抱き締めた。
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2886人が本棚に入れています
本棚に追加