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ーside 冬馬ー いつ言うべきか、ずっと悩んでた。 言わなければ。 でも、言いたくない。 夏にどんどん惹かれていく自分。 10も年下の女なんて、有り得ないと思ってた。 夏は初めて会った瞬間からその殻を破ったんだ。 しっかりと相手を見ようとする目。 一瞬で物事を察知し、俺にハンカチを差し出す。 その思いやりに。その勇気に。 話すようになって初めて分かる。 あの子は"男"を知らない。 奥手で純情で。会話だけでも緊張するほど、男と接することを避けてきたんだと。 それでも俺に近付いてきたあの日、彼女は一目惚れだと言った。 男を知らない女の子が開花する。 会うたびに綺麗になっていく。 それが俺のためで俺のせいだと分かれば、加速するのは自分の思いだった。 きっと俺の方が夏に惚れてる。 笑顔も優しさも、知る度にドキドキして。 怖さも辛さも、俺が守りたい衝動に駆られて。 膨らんでいく夏への気持ち。 同時に膨らむ罪悪感。 それが弾けとんだ気がした。 高校で、男と手を繋いでいる夏を見たときに。
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