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「…今の俺は好かれている自信がある。」
24時間の勤務が終わり、宗司の店に向かった。
どこか気にかけていた薫もついてきて、昼間から酒を飲んでいた。
「…あの子は…本当にいい子なんだよ。これだけ年の差があるのに、俺の方が癒されてる。」
「何だよ。結局ノロケか?」
「薫!……それで?」
「…多分、俺もあの子に一目惚れだった。落ち込んでいた俺にハンカチを差し出すあの子に、一瞬で惚れたんだよ。」
「「……………」」
「…消防士が嫌いな理由…言ったっけ?
…火事で父親亡くしてるんだよ。傍にいた消防士に助けてって言ったんだって。
だが、消防士は近付くことはしなかったって。」
「……バックドラフト?…フラッシュオーバー?」
「父親が見えてたらしい。」
「フラッシュオーバーか。それじゃ、隊長に止められてたんだろ。命令されて動けなかった。」
「…俺はあまり詳しくないけど、お前らにとって隊長命令は絶対だろ?」
「そうだ。その子の父親だってそうだと思うぞ?」
「分かってるよ。分かってるからフッたんだ。」
「「フッた!?」」
「ああ。俺を嫌うように辛辣な言葉を並べて。」
驚愕し、恐れをなした表情。
振り払われた手。
どれもが俺の心に刺さった。
それでいい。憎め。嫌え。
そう思った。
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