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好きなのに。嫌われる行動をする。 そうだ。明らかに俺は逃げている。 「認めるよ。逃げてるって。」 「どうして逃げたんだ?」 「そうだよ。らしくねぇぞ。」 「さっき言っただろ。俺は好かれている自信があると。 …憎んで嫌いになれたら、傷は小さくて済む。」 「…は?フッた時点でもう傷付けてるだろ。」 「…俺のために傷付く奴なんだよ。俺が離れれば、フラれたという傷だけで済む。」 「「……………」」 「…何人も火に呑み込まれる命を、成す術なく見送ったのは俺だって同じだ。 …嫌われたっていい。憎まれたっていい。ただ幻滅されたくないんだよ。 下手したら、あの子の父親を見送ったのは俺かもしれないんだよ。 大事な家族を亡くさせ家族崩壊の原因を作ったのは俺かもしれないんだよ!」 「…冬馬…」 「バカだな。お前。…現場じゃ誰より機転の利く優秀な消防官の癖に、色恋でこんなにボロボロになるな。」 …情けない。 非力な自分も、火の前じゃ何もできない自分も。 だから知られたくなかった。 でも、ずっと隠せるとは思わなかった。 今なら間に合う。 付き合ってない今なら。 弾けとんだとき、心は決められた。
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