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中学になって直ぐだった。 けたたましいサイレンの音に驚き、家を飛び出した。 家の近所にあった父の会社。 火事になっていたのはそこだった。 「…お父さんが火事で死んで、一時は悲しみで床に臥せっていた。 でも、急に人が変わった。 …いろんなことを完璧にしろと言われてきた。 ちょっとでも間違えたら恥だって、そう言われて叩かれた。」 「……ナツ……」 「…私はもう、親の手をすがる子供じゃない。 ちょっと大人になった今では分かる。伴侶を失った辛さとストレス、それを発散してるだけだって。 お母さんの気が済めばそれでいい。そう思って諦めた。 だけど、痛いし怖いのは…当たり前で…」 それから母は、家にも帰らなくなった。 どこで寝泊まりしているかも分からない。 ただ、試験期間は必ず帰ってくる。 結果を見て、満点だったら何も言わずに出ていき、ミスがあれば殴って罵倒する。
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