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フラれたってことは分かってる。 でも、千夏ちゃんの言葉は私の心に響いた。 私は凄く大事に扱われてきたと思う。 大人の人が、こんな子供の相手するなんてことはしない。 遊びならあるかもしれないけど、お金を貢いだり身体目的だったりとか一切なかった。 私の行きたい場所を優先してくれたり、車道側を歩いたり、カウンター席で隣が男の人だったら私を奥に座らせたり。 然り気無い優しさは、会うたびに感じるものだった。 それがマックの君だ。 消防官だけど卑劣な人じゃない。 私は嫌われてなんかいない。 そう思ったら、頑張れる気がした。 もう一度、正面から向き合って話したい。 消防官の本を暗記した頃、さらにマックの君に近付くために克服するべきものがある。 マックの君がいつも戦っている"火" オール電化の我が家で、火は買わなければ見れない。 コンビニに行って、ライターとろうそくを買った。 …こんな小さな火でさえ怖いなんて。 自分が情けなくて仕方なかった。
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