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ーside 刈谷ー …運命のいたずらか。 俺はこの子を知っている。 今でも鮮明に思い出せる、あの火事現場。 "助けて!!" そう必死に叫んでいた。 無情にも下った命令に、約束を守れず。 "…嘘つき" 呆然となったその子から飛び出す呟きに、無力さを感じられずにはいられなかった。 「…谷口さん。それで?消防士の何が知りたいの?」 「えっ!…えっと…具体的には…んー…」 「落ち着いて。ゆっくりでいいから。」 「…うぅーーー……あっ!!消防士って24時間勤務って本当ですか?」 「ああ。そうだよ。丸一日働いて、丸一日休みになる。そういうシフトだ。」 「じゃあ、一日の流れが知りたいです!」 「いいよ。特別に俺の勤務表を見せてあげる。」 幼い面影は残っている。 …こんなに成長したんだ。 あの子がどうしてるか、ずっと気になっていた。 向こうからやって来るとは思わなかった。
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