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ここまで不器用な恋を目の当たりにするなんて。 冬馬は恐らく、あの子の心を守ってやりたいんだ。 その傷を抉るのは自分だと知って身を引いた。 だけど、ずっと忘れられずに、胸の中だけに思いを閉まっている。 あの子は真っ直ぐな子だから、きっと理由までは知らないが"好き"という感情だけで知りたいと願ったんだろう。 同じ思い。同じ気持ち。 だが、守る者と守られる者の差は大きい。 そのすべての根源は 「…俺の行動が二人を引き裂いてる…」 思わず頭を抱えた。 彼女にも冬馬にも、謝らなければ。 「刈谷くん?まだいたのか?もう上がっていいぞ。」 「おはようございます、隊長。引き継ぎ済ませて帰宅します。」 「ああ。お疲れさん。」 …自分の行動で、溝を深くするか、それとも繋ぎ合わせられるか…ということだ。 言うべきなのか、益々混乱していくばかり。 引き継ぎを済ませると自宅に戻り、熱いシャワーを浴びながら考えた。
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