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週末。 ちょっとだけ腫れた状態だったけど、会いたいって気持ちを抑えることはできず、自転車で消防署に向かった。 いつもと変わらない風景。 それだけで心が安らいだ。 「…なっちゃん?…どうした?…誰にやられた!」 …あれ。刈谷さん? 計算が合わなくなってる。 頭が可笑しくなったかな? 最後に会ったのは土曜日だったから… そうだ。マックの君は日曜日のシフト。 今日は刈谷さんの日だ。 「あ、いえ。大丈夫ですよ。」 「誰にやられたか聞いてるんだ!」 「…あの、」 「なっちゃん!」 「と!…友達と大喧嘩して…」 本当のことは言えなかった。 刈谷さんも、他の隊員の皆さんも、私を心配してくれてるのが分かったから。 このところ、みんなが私のことをなっちゃんと呼んで親しみやすい状況になってた。 だから言いたくなかった。 刈谷さんは、ちょっとだけ顰めっ面になりながら「女の喧嘩は怖いね」と流してくれた。
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