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夏休み。
俺を見付けたと言って再会したあの日から、出勤日になると訓練を眺める夏がいた。
離れなきゃ。
頭では分かっていても、訓練に力が入る。
彼女が見てるから。自然に張り切ってる。
苦しく辛い訓練でも、達成した瞬間は自分が誇らしい。
同時にチラッと見てしまうフェンスの向こう側。
手を叩いて。万歳までして。
俺の達成を喜び、身体で表現してる。
…可愛くて、愛しい。
「…冬馬。なっちゃん今日も来てたな。」
「……ん。」
「いい加減、素直になれば?」
「どういう意味だよ。」
「なっちゃんみたいに、素直になれって言ってんだよ。意地っ張りが。」
「……………」
「好きだけじゃダメなのか?それだけで十分だろ?」
「…ダメだ。俺は夏を泣かせたくない。」
「なっちゃんの気持ちを無視してるだけで泣かせてるっつーの。」
「薫。そういう泣かせ方じゃねぇって言ってんだ。」
「…バカじゃん。ここで、お前の味方なんか誰一人いねぇよ。みんななっちゃんを応援してる。」
健気な頑張りは、隊員たちの心に簡単に入っていった。
俺だけが完全アウェー状態。
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