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純粋な分、引き寄せられる。 彼女と一言言葉を交わせば、誰だって魅力に気付く。 他の奴になんか渡したくない。 その本音が頭を支配する中、同世代の男の子と付き合った方がいいと思う気持ちさえある。 俺じゃない。消防官じゃない。他の誰か。 こんなに厳しい言葉をかけても、打たれ強い。 態度を冷たくしても、動じない。 それどころか、俺に言い返してくる。 どうして俺なんだ? もう、嫌ってくれ。 君の心の傷を抉りたくない。 深傷を追ったその場所に塩を塗りたくない。 俺じゃダメなんだよ。夏。 分かってくれ。 大事で、大切だから。 俺は俺を出さない。 君が離れても、忘れたりしないから。 どうか、大人しく諦めて。 その願いも空しく、夏は毎日職場に来ている様子。 俺がいるときは、俺から目を離さない。 穴が開きそうなくらいの視線を感じる。 俺がいないときは、刈谷副隊長のところへ。 そして隊員たちにいろいろ教わっているとか。 …どこまで頑張り屋なんだよ。 …怖いくせに。 俺のために克服しようと頑張るな。
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