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…俺のことじゃない。 直感的に思った。 だったらなんだ?この違和感。 「…休み明け……試験だ…」 夏休みが終われば、当然すぐにあるはずの試験。 つまり、母親と何かあったんだ。 「……っ。」 心配で堪らない。 すぐにでも声をかけてやりたい。 俺がいるから、と。傍にいるから、と。 そうは思っても出来ない。 「…これ、夏にやって。」 「は?」 「だから!夏にやって。お前からって言って。」 「んなもん、自分でやれ。」 「…頼みます。」 きっと落ち込んでる。 泣いてるかもしれない。 また殴られて痛い思いをしてるかもしれない。 ちょっとでも励ましたくて。 日曜日の出勤前、薫の部屋まで行った。 ちょっと値のはるアイスクリームとケーキを買って、それで少しでも気が紛れるように。 「どうしたんだよ?」 「…ちょっと落ち込んでるから。」 「お前が声かければ、すぐに元気になるだろ。お前を好きなんだから。」 「…頼むよ、薫。俺からとは言うなよ。」 「マジ、めんどくせぇ。ぶきっちょが。」 「悪い。」 なんだかんだ言いながらも、薫は引き受けてくれた。
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