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ーーーああ。 夏。 お前の考えてることが手に取るように分かる。 真っ直ぐに俺を見上げた目。 そこには、一点の曇りもない。 今まで、君の前では"俺"を出してた。 頭で考えるより先に自然と身体が動く。 それを夏は知ってる。 夏といれば、彼女を守るための行動に出る。 夏といれば、優しくなれる。 夏といれば、笑顔になれる。 そういう俺だろ? 君は俺をみくびってる。 それだけが俺じゃない。 たまに見せていただろ。攻撃性のある俺を。 あれだって、歴とした俺だ。 "キスするはずない" そんな信頼の目だ。 だったらそれを破るまで。 君の信頼を壊してやれば、きっと君は諦めてくれるはず。 ただ、最初で最後のキスが、こんなにも悲しいものだなんて。 デートに行くときも、手を繋いだりしなかった。 制御できるか分からなかったから。 …君に触れることが許されるその一瞬。 自分でやっておきながら、自分で苦しんだ。
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