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長い勤務時間が終わり、引き継ぎを済ませると、いつも彼女が居座るフェンス前に向かう。
「…夏…」
"特等席って教えてもらいました!"
笑顔でそう言っていた場所。
なるほど。ここからなら、誰であろうと全員の動きが見える位置。
この場に座ったり、立ったり、ジャンプしたり、喜んだり、応援したりしてた。
「…冬馬。帰らねぇの?」
「…帰る。」
「そ。じゃ、宗司んとこ行くぞ。」
「…は?」
「飯食いに。それから、お前の溜め込んでるものを吐きに。」
「……………」
「お前、死にそうな目してんぞ。何かあったんだろ?
吐き出さなきゃ、そのうち大怪我する。」
「薫…」
「とりあえず、飯食って!宗司に喝入れられたら、お前の問題も解決すんじゃねぇ?
俺、悩むの嫌いだから、お前みてるとイライラすんの。ばーーーか。」
その後、俺の車で移動した。
多分、これは薫の優しさ。
憎まれ口を叩きながら、俺を放っておけなかったんだ。
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