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「分からないって?何が?」
「…私は…友達なんていませんよ。はは…」
(危ない…暗い話するとこだった…)
何だろう。ビックリするほど、自分の心を吐き出しそうになった。
千夏ちゃんでさえ、自分のことを話すのに時間が必要だったのに。
感情をグッと堪え、唾を飲んだ。
「そうだな…学生は学生なりの悩みがあるもんな。俺も通った道だから分かるよ。」
「……えっ?」
「ナツちゃんより10歳も歳を取ってれば、16歳という年齢は通ってきたから分かるってこと。
ナツちゃんよりは人生経験してきたからね。
今は、ちょっとだけ大人になったから16の時分からなかったことがちょっとは分かるよ。」
「分かる…?」
「うん。友達と喧嘩したこともあったかな。今考えれば、こうしておけば大丈夫だったのに…とかいうのが結構ある。」
トーマさんは、笑いながら高校時代の友達との喧嘩の経緯を語ってくれた。
「…な?些細だろ?ただ真実を本人に直接聞いてれば、喧嘩にはならなかったと思うだろ?
でも、当時はそういう頭がなかったんだよな。」
「…直接聞く…」
その何気なく言ったであろう昔話が、ガツンと頭を殴られた気がした。
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