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ーside 千夏ー 夏は可愛い。 普段は膝が見えるか見えないかの制服に前髪が長いしオサゲ髪と地味にしてるけど、着飾ったらきっと見違える。 それよりも、今どき珍しい純粋さだ。 内気で人見知りが激しいからいつも顔が強張ってるけど、夏は心が綺麗だって言葉が当てはまる。 人を差別せず、何事にも必死で取り組み、相手の気持ちを思いやれる。 …男がつけこむには最高のカモ。 だから、彼氏に守ってもらうべきなんだ。 だから、彼氏にはそれ相応の人がいいと思ってた。 たまたま好きになった相手は、ずっと歳上。 ただがっつくだけの高校生のガキより、ずっと安心できる。 でも"友達"というワードが引っ掛かった。 体のいい断り文句。 そういうのは、友達以上は見込めない。 相手は大人。 だけど、子供は子供なりに真剣だって言いたかった。 だから、釘を刺した。 するとどうだろう。本音で語ってきた。 (本気で考えてくれてる…) 直感的にそう思った。 それに、チラホラ見せるあの表情。 まんざらでもないって感じ。 夏は努力の子。きっと近付くにつれて惹かれていくものがあるはず。 大人の男として、高校生なんか相手には出来ないって考えは持ってない。 遊ぶ感覚も見られなかった。 (…いい男かも。…もうちょっと様子見だな) 過ぎ去る車を見送り、家に入った。
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