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ーside 冬馬ー (…なるほどね…) 駅の裏口は住宅街。 一軒家の前で止まってこっちを振り返り、手を振った彼女。 家の灯りは点っていない。 これがこの前から感じていた違和。 帰りたくない。 自立したい。 そんな言葉と行動に、注意して聞き出せば… 家には母親はいないってこと。 そして、嫌われてると感じている。 自宅マンションの駐車場に車を停め、シャワーを浴びたあと、行きつけのbarに向かった。 「…いらっしゃ…よう。冬馬。」 「ビールとなんか、飯くれ。」 高校時代からの同級生が営む小さなbar。 今は俺の安息場所になっている。 「はい、ビール。…何だよ?辛気くさい顔。」 「俺さ、今、高校生に言い寄られてんの。」 「……マジ。犯罪じゃん!」 「バカ。手ぇ出してねぇよ。」 「あ、ちょい待った。客……あ、薫だ。」 「…帰る。」 「何でだよ。よう。いらっしゃい。」 「ばんわー。…何だよ!冬馬も来てたのか!」 「…っるせーのが来た…」 「何だと!?」 「まぁまぁ。薫、ビールでいいか?」 「おう。あと、適当に飯。」 …クソ。 嫌になるくらい同じ注文。
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