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なぜそこまで惹かれるのか、自分でも考えてみた。 あの日、あのタイミング。 俺は確かに気持ちが沈んでいた。 何度も目にする光景、酷い残骸、助けられなかった命。 希望通りに進んだ道は、地獄絵図同様だった。 全員助けられる訳じゃない。 精神を強く持て。 己に負けるな。 先輩隊員から、口癖のように言われた言葉が、今になって身に染みて理解出来る。 そんな中で助けられた命もある。 俺たちにとって、それが希望。 だがあの日は、目の前で失った命がリアルすぎて眠れなかった。 名前も知らないその人に、心で何度も謝っていたときだったから。 心配そうにハンカチを差し出した高校生に、生きる希望を教えてもらった気がしたんだ。 優しさ。温かさ。 それが生きているということだと。 「…あぁーー!もう!!どうすればいいんだよ!相手は高校生だぞ!!」 「…うわ。パニックになった。」 「歳上なのに!この子なら俺を癒してくれるって思ったんだよ!クソ!」 「…お前、もしかしてこの前のこと引き摺ってんの?」 「……目の前だったんだぞ。助けてって…俺に手を伸ばして…あと5mだったんだよ薫…」 「…バカ。どう見ても無理だったろ。隊長が止めなきゃお前まで死ぬとこだったんだぞ。」 「……………」 彼女の話。大体見当がついた。 だからこそ、俺は諦めるべきだと思った。 でも、気持ちが膨らんだ今、迷っていた。
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