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*腹黒い狂犬・1*
数日が経ち、若頭から呼び出しがかかった。
恐らく、面接ってやつだろう。
前日には、縞さんが呼び出されたらしく、聞けば、面接とやらは俺で最後らしい。
午後九時。
こんなに遅い時間に呼び出されるとは思っていなかった俺は、気怠さと気の重さとで、組長の家の立派な門前で長い息を吐く。
くそ怠い…。
面接なんざ、拒否りてぇ…。
そうは思っても…………。
もう一度、小さく溜息をつくと、ケヤキの木で出来た大きな門をくぐって玄関先へと進む。
呼び出してきたのは、若頭だ。
あの人の呼び出しを拒否るなんて真似、後で何を言われるか……されるか分かったもんじゃない。
長い距離を歩き、玄関前まで来ると、重い心のままにチャイムを鳴らす。
すると、インターフォンからサーッという、中と繋がった時に聞こえる独特の音が鳴った。
『はい。どちら様ですか?』
聞こえてきた声は、落ち着いた男の声で、組長の世話係をしている藤宮さんの声だった。
藤宮昌哉(ふじみや まさや)。
三十半ばで、普段は組長の世話係兼ボディーガードを勤めているが、そればかりか家の周りの世話までしている。
「逢坂です。若頭に呼ばれて来ました」
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