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「はぁ~面白かった!まっさか、あの転校生が例の猪くんとはね~。確かにありゃ変だわ。」
まもなく始まる始業式。
体育館に各クラスごとに整列する中
私の後ろに並ぶ愛野は終始この調子だ。
余程、彼のキャラが気に入った様子で笑いを堪える事が出来ないみたい。
クスクスと背後から聞こえる度に、私の中に渦巻く怒りがどんどん貯まってゆく。
「もう、愛野本当にうるさい!」
キッと彼女を睨み付けてみるが全く効果は無く、「ごめんごめん」と、口では謝りながらも目元のにやつきは隠せていない。
「でもさ~あ、雅。もったいないよ。あんな男前振っちゃうなんて。あ、これ真面目な話ね?」
「っ……」
やっぱりさっきまでふざけてたんだ。
「ルックス良しの、スタイル良しなんて言うことないじゃん。一応キープするだけしとけば良いのに。休み時間も猪くんっ…じゃなかった、佐山ったら女子に囲まれて質問責めくらってたじゃん?ありゃ、競争率上がるよ~?」
「今が買いだね、絶対」と、付け足して眉間に皺寄せる愛野が何度となく頷いた。
確かに、彼女のいうように佐山ハルの注目度は凄まじいものだった。
同じクラスの子だけではなく、隣のクラスまで。極め付けは下級生までが数十分の休み時間を割いて教室を覗きに来る始末。
携帯電話という情報網は本当に恐ろしい。
「そこまで言うなら愛野が付き合えばいいでしょ!私はそんな大暴落必死な賭けに身を任せたりしないんだから!」
所詮は転校生だから、ちょっと見た目が良いからだけの人気。
どうせその内性格異常者としてのレッテルを
張られて、蚊帳の外に追い出されるのがオチだ。
「いやいや。何を言いますの、雅さん。朝っぱらからあ~んな雅一筋にアピールしてるとこ見せられて狙えますかっての。私なんて相手にされませんよ~。」
自らの顔の前でヒラヒラと手のひらを左右に振る愛野。
謙遜する健気な女性を取り繕っているみたいだけど、
「ただ自分が年上好きなだけの癖に」
「あっは、バレた?タメなんてガキ過ぎて無理だね。」
これが本性。
私がアタフタしてるのが面白いだけなんだ。
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