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サラサラ揺れる黒い髪
子犬みたいに真ん丸な瞳
「あーあー あー。皆さーん、間もなく式を開始しますからお静かにお願いしまーす。」
マイク越しに響くやさしい声
品の良い笑顔から漂う誠実さ
まさに、おとぎ話に登場する王子様だ。
「こらこら、雅さん。すんごい前のめりになってるよー。浮気は駄目ですよー?」
「わっ…!?」
愛野がブレザーの襟を引っ張り、私を現実へと引き戻す。
もう少し酔いしれていたかったのに。
「って、浮気ってなに!」
控えめなボリュームでまた彼女を見ると、
「あんたには野生のダーリンがいるでしょ?」
クツクツと口を押さえて笑いを堪える愛野。
最初は意味がわからなくてポカンとしていた私だったが、
しばらくして、ドッドッドと足音を鳴らし大地を走り回る例のモノが頭に浮かび上がった。
「なっ…!?またそうやってからかう!てか、ダーリンでもなんでも無いし!それに王子のことだって好きな訳じゃないもん。ただ……、ただほんの少し憧れてるっていうか…とにかく違う!!」
と、
つい、声をあらげてしまった私の横で
「ゴホン」と大きな咳払いをしたのは宮本先生。
蛇に睨まれた蛙。
愛野がコソコソと列の後方へ逃げていったのはいうまでも無く。
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