第四話

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「良かった。やっぱり誰もいないや。」 キィと軋む扉を開け飛び込む景色は、本、本、本。 図書室の独特な匂いが鼻をくすぐる。 テスト前には生徒でごった返すこの場所だけれども、校舎の隅にひっそり配置されているせいか普段はあまり人気がない。 一人になって考え事するにはうってつけのスポットだったりする。 確か最後に来たのは 二年の学年末テストがボロボロだった時だっけな。 「はぁ~…あ~………」 両手を頭上に向けてグッと背伸びをして深呼吸した後、グラウンドが一望出来る窓に額を寄せた。 少しだけヒンヤリとするその感覚が心地よくて、 猪バカの事なんか忘れられる気がする。 「…………ん?」 その時、スカートの右ポケットに入れていた携帯が僅かに震えた。 すかさず手を忍ばせ確認する画面には、 ー 教室飛び出したって聞いたけど何処にいるの?別に心配してる訳じゃないから ー 絵文字一つない愛野からのメッセージ。 「どっちなのよ…」 クスリと笑みが溢れた。
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