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「私達……、以前会ったことありますか?」
「……へ…?」
「アナタの口振りだと面識あるような感じですけれども……、ごめんなさい。ちょっと……思い出せないんです」
「ええっ……、嘘ぉ……」
瞬時に顔をあげ目を丸くした彼が、開いたままの口でぱくぱくと空気を食べる。聞き取れない程の小さな呻き声を上げた後、急に踞ったと思えば書いて字のごとく頭を抱えてしまった。
同じ高校の制服に身を包んでいるが、見覚えはない。
第一こんなに派手な髪色した男の子が校内にいれば印象に残りそうなもの。
過去にどこかで関わっているのに、私が忘れてしまっているんだろうか?
素直に思った事を口にしてしまうとは……、デリカシーに欠けていた自分が悔やまれる。
……酷いこと言っちゃったよなぁ……。
「じゃあ……、改めて。もう、一回」
「え……?じゃあって……?」
スクッと膝を伸ばし、ゴホンと咳払いを吐いた彼が自らのネクタイを整える仕草。まるで、人が変わったかのよう……。
仕切り直しってやつ?というか、人の話は聞かないスタンスなんですね……。
「今井 雅さん」
「はいっ……」
「ボクトセイシキニ、オツキアイシテクダサーイ」
なんでそこでカタコトになるんだよっ……!!
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