第一話

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急激に縮まる彼との距離。動揺に目を細めた私。警戒心たっぷりに彼を睨み付けた瞬間、しっかり、ハッキリ。互いの視線は重なった。 「っ……」 奇抜な髪色にばかり目を取られていたが……、よくみれば綺麗な顔をした男の子。線の深い二重瞼、モデルみたいに小さなフェイスライン。 キラキラと太陽光に反射して輝く金色の髪も、癪だけれど似合ってる。身長だって160㎝の私よりも優に高くて、年頃だというのに色白な肌にはニキビひとつない。 嘘でしょって。 女の私が、恵まれ過ぎてるその容姿に嫉妬を覚えた瞬間──しかも、相手は男。 悔しくて、なんだか急に恥ずかしくて……。 今朝出来たばかりの額のニキビを前髪を撫で付け隠してみる。対抗した所で勝てる気しないけど。 「あはっ……今井さん。見過ぎでしょ」 彼の苦笑いにハッと意識が現実に引き戻される。私は今……、何を考えていたの? 「どっ……退いてよ!ホームルーム始まっちゃうじっ……!?」 動揺を悟られたくなかった私が、逃げる様に彼の横をすり抜けたその時だった。 「…今井さんが好き。大好き。めちゃくちゃ愛してる。絶対大切にするから……お願い。俺の彼女になって?」 ヘラリっとにやけた彼の口から発っせられたのは、フワリフワリと宙を舞う綿ボコリなんかよりずーっと軽い愛の言葉。 ……チャラ過ぎ。 「……ごめんなさい。私、そういうの興味ないんだ」 数秒の間を持たせた後私は丁重に頭を下げた。本当は即答でも良かった。イライラしてたし?でも、考えた振りをするのが礼儀だと思った。一応ね。 あのさ。俺って猪突猛進タイプっつうか…とにっかく一途だから。自慢じゃないけどさ」 「へ…?ちょ、ちょと…つ、?え?」 「なにが言いたいかというと、俺には今井さんしかありえないって事。そこらへんよろしく」 理解に苦しみ固まる私に、彼はだめ押しと言わんばかりに「ねっ」と、渾身のスマイルを向けた。 「っ………」 ……会話のキャッチボールはいずこ。 ビュンっと強く、屋上に吹いた春風が、私の髪を四方八方へと揺らす。その風は心無しか……私の心を映し出している気がしたんだ。
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