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「だーめ。俺だってこのカレーパンしか昼飯無いんだから。」
「え~、意地悪言わないでよ~!」
未だに佐山の制服袖を掴んだままの上原さんは、ムゥっと口を尖らせて直ぐにフフっと小さく笑う。
その頬はほんのりとピンク色に染まっていて、さっきまでの雰囲気は嘘の様。
それはまるで、恋する乙女の表情。
「あ、そっか…」
上原さんは元から好意がある佐山を待っていた。
そんな中、空気の読めない私がヘラヘラ誘って来るもんだから気分を害された。
という説明がつく。
それならそうと言ってくれたら良かったのに。
無視は傷つくし、
なにより佐山に負けたってのが不快だ。
「なーに、考えてんの?」
「……え?」
その声にハッとして顔を上げると、さっきまで上原さんと笑い合っていた佐山がすぐ目の前に。
両手を私の机におきニコニコと謎の笑みを浮かべている。
「わかった。俺の事考えてた?」
「っ……誰が!」
そんな台詞サラッというなんて
天然なのか、チャラいだけか。
それに、こんなタイミングで話しかけて来ないで頂きたい。
不安を胸にチラリと横に目をやれば、
案の定。
鋭い目付きでこちらを睨む上原さんと目があってしまった。
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