【1】あこがれとの出会い

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かなちゃんとみちよちゃん 水流添加奈江には年が離れた姉・道代がいた。 目が大きく、睫毛は長く、色が白く、小柄で、女性らしい豊満で丸みを帯びた体型を持ち、コケティッシュで、コロコロと笑う声が愛らしく、○○小町と言うには少し元気すぎるご近所の人気者。くるりと巻いた天然パーマの髪をきちんと真ん中から分けてゴムとリボンでまとめ上げ、緑色のリボンがとても似合う髪型と映画のヒロインのイメージにぴったりだった彼女は、近所の男子学生から密かにビビアンとかスカーレットと呼ばれていた。 ガラスケースに収まるフランス人形か、少女雑誌の人気イラストレーターが描く女の子のような、風貌の姉。 大変もてまくり、ラブレターの数も半端なく多かった。 そんな姉の妹なのだから、さぞ可愛いだろうと知らない人は勝手に想像するが、当の加奈江はまったく正反対の少女だった。 確かに、人形っぽい顔立ちはしていた。 ひな人形の、おひな様飾りの、上段に座っている、どちらかといえば内裏様のような、うりざね顔。切れ長な目鼻立ち。背は同じ年の男子より高く、すらりとしていると言えば聞こえは良いが、凹凸に乏しい針金のような体型で、女性らしい丸みには欠けていた。 髪質も姉とは違い、癖のない絹糸のような黒髪は艶やかで、誰も彼も褒めそやした。 性格も女らしさの極みである姉とはまるで違い、さばさばとした、どちらかといえば雅味に欠ける実理家。つまり、可愛げのない少女だった。
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