第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 2013年、日本では多党政治が迷走していたが、新規政党が国民的詐欺といわれつつTPP参加に足並みを揃えた。ここにいたって識者が、口をそろえて衰退するだとうと警鐘をならしていたデフレ基調の経済が急激に回復する現象が経済界で起こった。 日本の産業会では大転換が図られた。これが、いわゆる官制主導なのか、政治指導なのか国民には皆目見えざる変化だった。 日本の大手電機企業ソミーが大きく経営悪化しているシャーヴを吸収合併した。これは、他国ではあまり関心がもたれなかった事実だが、日本国民は経済界の大変動に圧倒されていた。 実は、この時期の日本大手企業の多くは、外国資本が多くの割合で参入しており、閉鎖的な日本企業もこれまでの慣習にとらわれないグローバル戦略が必要だ。などと新聞各紙は報道していた。 そんな日本の経済の動向など無関心な若者層の一人、ユウジ・トヨダは携帯タブレットのひとつの広告に目を引かれ、近くのソミー社で開催されるイベント、ゲームトーナメントに参加することにしていた。大学は卒業したものの、日本ではこれまでのように大学に進学し、そのままレールに乗っかり、有名大企業に採用されるような時代ではなくなっていた。 形だけの就職活動を数度、繰り返してみたものの、彼の学力は、これまでの日本のユトリ政策や、先の見えない漠然とした不安感で積極的な就業活動をあきらめていたころだ。 唯一のストレスの発散は、ハイスペックデスク型パソコンの前で繰り広げられるバーチャルなファンタジーの世界や、架空の戦闘シーンでゲームポイントを上げることが唯一の楽しみだった。そんな折、コモディテイ化した製品の製造を海外に移転を終えた大手企業は新戦略として、若者文化を大幅に取り入れるという、表向きの戦略変換を発表していた。 また、別の方面でも国民の目に見えないかたちで、構造変換が進んでいた。原発反対や増税論議の陰で、聖域なき関税撤廃というTPP参加の真の戦略が見えにくくなっていた。 このTPP参加表明のあと、新聞の片隅にひっそりと日本の重工業大手各社が、兵器関連の部品の輸出規制を撤廃すると政策転換され議会を通過した。 ユウジ・トヨダは、電車を取り換え、東京のソミー本社会場に足を運んだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加