一、くつした履いた猫?

7/44
前へ
/240ページ
次へ
「おえ。朝から胸焼けするかと思った」 エレベータから降りた狼くんが首を触りながら舌を出す。 喉が渇いた犬みたいで、その仕草が可愛い。 「え? なんか甘いものでも食べたの?」 「違いますよ。美国 笙(みくに しょう)です。朝から、パートナーのインテリアデザイナーの紺野さんとベタベタして、胸やけです」 美国……。 うちの会社で一番有名なデザイナーだ。 この前、大型遊楽施設のデザインコンペに入札して、見事落札してた。 彼が手がけるものは、大型施設ばかりで、その分知名度も他の人たちよりグングン上がって行っている。 私も身近で見たことが無かった。そうか、もっとよく見れば良かった。 噂では、すっごい王子様ルックスらしいと聞いていたのに。 「良いですか? あんな危険な奴に、『家に行って良いか?』とか『家まで送る』と言われたら、絶対に断って下さい。猛ダッシュで逃げるか大声を上げるんですよ?」 「……狼君、心配の仕方がお母さんみたい」 私もう26歳ですからそんなに心配されたくないいですけど。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

964人が本棚に入れています
本棚に追加