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「おえ。朝から胸焼けするかと思った」
エレベータから降りた狼くんが首を触りながら舌を出す。
喉が渇いた犬みたいで、その仕草が可愛い。
「え? なんか甘いものでも食べたの?」
「違いますよ。美国 笙(みくに しょう)です。朝から、パートナーのインテリアデザイナーの紺野さんとベタベタして、胸やけです」
美国……。
うちの会社で一番有名なデザイナーだ。
この前、大型遊楽施設のデザインコンペに入札して、見事落札してた。
彼が手がけるものは、大型施設ばかりで、その分知名度も他の人たちよりグングン上がって行っている。
私も身近で見たことが無かった。そうか、もっとよく見れば良かった。
噂では、すっごい王子様ルックスらしいと聞いていたのに。
「良いですか? あんな危険な奴に、『家に行って良いか?』とか『家まで送る』と言われたら、絶対に断って下さい。猛ダッシュで逃げるか大声を上げるんですよ?」
「……狼君、心配の仕方がお母さんみたい」
私もう26歳ですからそんなに心配されたくないいですけど。
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