五、キスだけでも貴方は良いですか?

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駅で電車を何回か見送っても、狼君は現れなかった。 「遅いですね。狼君」 「そう言えば、定時直前になって前回一日で修正送れって言ってた馬鹿女優から連絡受けていたぞ」 「それを早く言って下さいよ」 駅のホームでこれ以上、美国部長と一緒に居る所を見られても、様々な憶測が飛び交うだけな気がする。 狼君……。大変なら手伝ってあげればよかったのかな。 急に不安になってしまったけれどもうこうなったら仕方が無い。 「言っとくがな、俺は他人の家でお前みたいなノロマを襲う気はない。それにこの片手だ」 「昨日も片手でしたけど、首に噛みつきましたよね」 「ああ、そうだった。消えたか?」 また駅に電車が滑り込んできて、今度は美国部長に手を引っ張られ乗り込んだ。 そして、そのまま首の髪を掻きあげられて、首を凝視された。 「っち。蚊に刺されたみたいにほんのり赤くなってるだけか」 「こ、これは部長じゃなくて、」 狼君です、と言おうとしてそれ以上は真っ赤になってしまって俯く。
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