五、キスだけでも貴方は良いですか?

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「ふん。どうでもいい」 途端に不機嫌なった部長に引き剥がされて、私は離れた場所で外の風景を見る。 本当に、部長は良く分からない。 口が悪いだけで、性格までは悪くなさそうなのに。 気持ちも表情も全部隠してしまうその横暴さが問題だと思った。 とうとう、狼君のマンションへ着いたけど狼君からは連絡が来なかった。 警戒は怠らないように、身を引き締めつつ美国部長を中に入れるけれど、私の心配は本当に杞憂に終わりそうだった。 「サンドリヨン!」 靴もそこそこに揃え、部長はキッチンのドアをガリガリと爪を立てているサンタの方へ駆けて行く。 「何だ、このマンションは! 動物を飼う飼い主の気持ちが全く分かっていない。下にドアを付けるか、ガラス貼りにするべきだ!」 部長はそう力説しながら、サンタを恐る恐る抱きしめる。 「か、可愛い。俺のサンドリヨン!」 頬擦りすると、そのまま片手で抱きしめたまま絨毯の上でコロコロ左右に揺れて寝そべる。 右手を怪我して居なかったら部屋中を転げ回りそうだった。 「やはり! 君は美しい! その宝石の様に輝く瞳! 上品な口元。ああ、真っ黒な灰を被っているが手足が白いのだから君は元は上等な白ネコだったのだろう。だがそれもまた可愛い」 部長は、手足に白い靴下を履いているのではなく、灰を被った本当は真っ白な猫だとイメージしているんだ。
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