五、キスだけでも貴方は良いですか?

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だから灰かぶり姫=シンデレラ=サンドリヨンなんだ。 「やだ。美国部長って私より乙女だわ」 「うるさいぞ。俺達の時間を邪魔するな。喋るな」 口ではキツイ事を言っている癖に、美国部長の声は柔らかく、目尻は垂れさがり。 イケメンな顔が台無しだった。 ムービーで撮りたい。 初めて、美国部長の尻尾と耳を見た。 ブンブンと大きく振るその尻尾は、まさしくワンコだった。 「ああああああ。可愛い可愛い可愛い。連れて帰っても良いかな? ハニー」 「わ、それは駄目です! 私のサンタなんですからね!」 慌ててサンタを奪い返そうとして、またしても盛大に扱けてしまった。 眼鏡を割ったあの日の様に。 「――おい」 一つ違うのは、扱けて美国部長の胸に鼻を打ってしまったことぐらいだ。 「痛いんだが? 今度は肋骨でも折ってくれるのかな?」 「ひー。すいません。でも、でも、サンタは私にとっても大事な猫です。もう離れるとか、今さらできません」
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