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片手で不自由にしている事を良い事に、美国部長からサンタを奪うと離すものかとカーテンに隠れた。
この異常なまでの部長のサンタへの愛情。
本当にどんな手を使ってでも、奪い去ってしまいそうだ。
でも、サンタは私と狼君の大事な一歩を踏み出させてくれた大事な大事な家族だ。
もう離れるなんて考えられない。
「そんなに俺に渡したくないか。地山美冬」
不意に予備呼び捨てされて胸がざわざわとゆれた。
立ち上がった美国部長は、乱れた髪を整えながらカーテンに隠れた私とサンタの方へやって来る。
窓越しに、真っ直ぐに此方を見る美国部長に、息を飲まずには居られない。
金縛りに合うかと思うぐらい強い瞳に吸い込まれそうになる。
すぐ後ろまで来た瞬間、サンタを守ろうとカーテンに身をくるむ。
きょとんとしたサンタには申し訳ないけれど、私が大事にするから、美国部長には渡せないの。
「俺は別に――お前ごと奪って持ち帰っても良いぞ、地山美冬」
後ろから肩を抱かれ、耳元で甘く囁かれた。
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